星野道夫
アラスカの光と、
もうひとつの時間。
十九歳のとき、東京・神田の古書店で手にとった一冊の洋書。そこに、北極圏の小さな村の写真があった。
宛名もわからないまま、彼は「村長様」と手紙を書いた。半年ほどして、返事が届いた。
それから二十余年。カリブーの旅、グリズリー、オーロラ、そして極北に生きる人びと。彼はただ待ち、見つめ、書きつづけた。
ぼくたちが毎日を生きている同じ瞬間、
もうひとつの時間が、確実に、
ゆったりと流れている。 星野道夫『旅をする木』より
この部屋には、写真を一枚も置いていません。彼の写真は、彼の本の中で生きています。ここにあるのは、その光の記憶だけです。
本の中の村
1973年 夏 ・ 66°15′N 166°04′W
見知らぬ村長への一通の手紙。はじめてのアラスカの夏を、イヌピアットの家族とともに過ごした。
カリブーの旅
1980年代 ・ 68°N 150°W
無数の群れが、記憶よりも古い道をたどってツンドラを渡ってゆく。彼は何週間も、ただ待った。
秋のツンドラ
63°04′N 151°00′W
ほんの数週間、大地は赤と金に燃える。グリズリーは長い眠りの前に、ブルーベリーを食べつづける。
森の家の灯り
1978 — 1996 ・ 64°50′N 147°43′W
アラスカ大学で野生動物管理学を学び、そのままこの地に暮らした。家を建て、直子と結婚し、息子の翔馬が生まれた。
クリル湖
1996年8月8日 ・ 51°27′N 157°06′E
撮影のために訪れたこの湖で、ヒグマに襲われて亡くなった。四十三歳だった。
ひとりの人間がたどった、北の海をめぐる長い旅。
正距円筒図法の略図 ・ 東経128°〜西経132° ・ 北緯33°〜73°
- 19521 ・ 千葉県市川市9月27日、生まれる。
- 19732 ・ シシュマレフはじめてのアラスカ。ひと夏を村で過ごす。
- 19783 ・ フェアバンクスアラスカ大学に入学。ここが家になる。
- 1980s4 ・ ブルックス山脈・北極圏カリブーの季節移動を追う。
- 19865 ・ デナリ『グリズリー』でアニマ賞。
- 1990s6 ・ アラスカ南東部1990年、木村伊兵衛写真賞。ワタリガラスの神話とトーテムポールを追う。
- 19967 ・ カムチャツカ、クリル湖8月8日、旅の終わり。
本物の写真は、彼の本の中にあります。静かな夜に、一冊をひらいてみてください。
- 『グリズリー』
- 『Alaska 風のような物語』
- 『旅をする木』
- 『ノーザンライツ』
- 『森と氷河と鯨』
- 『長い旅の途上』
写真の著作権を尊重し、このページでは作品を複製していません。画面の風景はすべて、色と形による描写です。座標は概略です。